★★ 森で危険な獣と遭遇した (でも幼獣)
今回は、森で可愛くも危険な生き物と遭遇したお話です。
ちょっと文体変えます。
森の遊歩道(車両通行可)を
ヨロヨロと横切る小動物を見た。
距離があったので追い付くまで時間がかかったが、それは遠くへ逃げておらず、道のわきの草むらに身を潜めていた。
アライグマ
まだ子どもである。
人を見たのは初めてなのだろう。
警戒しつつ、じっとこちらを見ている。
アライグマはもともと日本には生息していなかったが、ペットとして飼われていたものが無責任な飼い主によって野に放たれ、野生化し繁殖している。
森林、農耕地、市街地など、あらゆる環境に適応し生息域を広げ、農作物を食い荒らし、病気を媒介し、人とその生活に害をなす存在となっている。
特定外来生物の指定を受け、駆除目的で捕獲が続けられているが、その成果は個体数の増加に追い付いていない。
本能に従って、精一杯の威嚇をしてくる。
恐くはないがしかし…
寄生虫や、狂犬病などの恐ろしい病を媒介する危険があり、嚙まれるなどすると大変なことになる。
不用意に近づいたり触れたりしないことが推奨されている。
素人が捕獲しようとするのは危険だ。
毛の生え方から見て生まれたばかりというわけではなさそうだ
それなのに、ここまでヨロヨロしているのは正常とは思えない。
怪我をしている可能性がある。
もしかしたら通行する車に接触したのかもしれない。
あたりに親がいる気配はない。
助けたい気持ちも湧いてくるのだか、もしこの子が成長したら
この森に棲む小鳥や、クマゲラ、フクロウなどの貴重な生き物を捕食するだろうことは想像に難くない。
そのことにはけっして良い感情を抱けない。
だが…
ひとしきり威嚇したあと、この子は覚束ない足取りで草むらへ分け入っていった。
自らの生きる道を探すように…
わたしはただ、その姿をだまって見送るだけだった。
何ができるか、何をすべきかわからなかった。
小さな体を引きずって歩くこの子が、長く生きられるとは思えない。
しかし、生命力の強いアライグマのこと、死線をくぐりぬけしたたかに成長するのかもしれない。
たぶん、わたしにはこの子のその後を知ることはできないだろう。
そしてわたしは
将来、ふしぎな恩返しを受けるチャンスを失ったのかもしれない。
おわり